EVENT・SEMINAR

MaaSは自社が
成長するチャンス

MaaSを実現は、単独の企業や自治体ではとうてい無理。
企業や自治体が集まり、協力し合って初めて効果を発揮します。
MONETコンソーシアムの大きな役割の1つは、皆さんがつながる場を提供すること。
「MONET 3UP プログラム」というユニークなコンセプトで企業や自治体の成長をサポートします。

 

2021.08.26 MeetUp

【Expert Pitch #8】Withコロナ時代のモビリティ戦略〜MaaSが都市を変える〜

一般財団法人 計量計画研究所 牧村和彦 氏

MONET Meet UP Expert Pitch #8

MaaSの最前線で活躍するエキスパートをゲストに迎え、事業開発のヒントとなるインサイトをお伝えする「Expert Pitch」。第8回となる今回は、第1回Expert Pitch に登壇いただき好評を博した計量計画研究所の牧村和彦氏を再びお迎えし、最新のMaaS関連プロジェクトと変化する世界の都市計画についてお話しいただきました。

「Withコロナ時代のモビリティ戦略〜MaaSが都市を変える〜」

一般財団法人 計量計画研究所 牧村和彦 氏

MaaSが都市を変える

牧村氏は所属するシンクタンクで、モビリティの将来ビジョンを描く仕事を手掛けており、様々な地域のスマートシティやMaaSの企画戦略に関わっています。MaaS分野の第一人者として数々の書籍を出版しており、今年3月に出版された「MaaSが都市を変える:移動×都市」は、Amazonの交通・一般関連書籍部門でベストセラー1位を獲得しています。

牧村博士プロフィール牧村博士著書

前回のMeetUPでは「コロナ×MaaS」をテーマに国内外のMaaS事例を紹介し、今後の動きに向き合うヒントとなる様々な情報をお話しいただきました。それから一年経った今もなお続く新型コロナウイルスの影響は、牧村氏の予想を越える変化をもたらしていると言います。

 

「世界中でデジタル化が加速し、環境、エネルギー問題など生活に対する考え方が見直され、モビリティを取り巻く状況も激変しています。スマートシティを目指す都市計画にも大きなインパクトを与え。数年前であれば絵空事と思うようなアイデアが一部の都市で先行して実現されている」と牧村氏は説明します。

 

 

MaaSを取り巻く世界の今

前半では、コロナ禍の後の人々の移動の回復に向けて、デジタルを活用した安心安全な移動環境と車両技術で、世界のMaaSプレイヤーたちがどのようなチャレンジをしているのか紹介されました。

 

例として、Googleのアルファベット傘下で自動運転技術を開発し、レベル4の商用サービスを昨年開始した「Waymo」をはじめ、中国で自動運転バスの実装を第2段階へと進めるバイドゥの「アポロ計画」、フォルクスワーゲンのオンデマンド型交通サービス「MOIA」を解説。コロナ禍で変化した移動の考え方に対応すべく、多くの交通ネットワークカンパニー(TNC)では新しいサービスモデルや戦略を次々に打ち出しています。

世界のMaaSプレイヤーは今

コロナ禍とあわせて取り組みが加速しているのが、電動化やカーボンフリーの流れです。世界でガソリン車販売を廃止する政策が発表され、地域によっては自動車から公共交通へのシフトが進んでいます。特にバスを活用する動きは世界で広がり、50〜150人乗りでフルフラット、電池や水素燃料といった新しい車両や、道路に敷かれた白線を自動認識する技術が実用化され、バス革命ともいえる状況になっています。

世界はバス革命

また、日本では当たり前と思われている公共交通の利用が今は世界でムーブメントになっています。料金を変動したり、学生や低所得者層、エッセンシャルワーカーは料金を下げたり、利用料金も含めて様々な取り組みがあり、どのような計画が上手くいくのか参考にしようと、それぞれの動きに注目しています。

海外の事例

都市部での自動車利用を規制する動きも欧米では加速しています。

 

自動車と歩行者が衝突した場合、時速30kmでは1割、時速50kmでは5割が重症化するというエビデンスをもとに、ベルギーの首都ブラッセルでは2021年1月から市内全域で時速30km規制を導入しました。環境へのリスクも減らせることから、スペイン全土(2021年5月~)、フランスパリ(2021年8月30日~)でも中心地での速度規制を始めたことで話題になっています。

 

他にもコロナの影響を受けた動きとしては、NYでは歩行者天国や路肩をオープンレストランにする取り組みが複数実施され、時限措置から恒久化されようとしています。
 

海外の事例

モビリティを暮らしのハブにする

後半は牧村氏の著書で「Beyond MaaS」と定義する、移動と目的がデジタルでつながることの重要性について、すでに実現している国内外の事例をもとに解説されました。

 

「日本ではMaaSの議論が遅れていると言われていますが、ニューノーマル時代に対応したサービスとしてこの2、3年で社会実装が進み、移動だけでなく商業や観光とも連動して事業展開していることは、世界でも特筆すべきこと」と牧村氏は指摘します。

 

例として小田急電鉄の「EMot(エモット)」、JR東日本の「Ringo Pass」、JR西日本の「Wester」、トヨタの「My Route(マイルート)」を挙げています。「異なる価値観を掛け合わせて、幅広くユーザーに提供できるユニバーサルMaaSは、国家プロジェクトとは別に注目すべき動きなのです。」

 

MaaSは移動価値だけでなく住宅の価値も変化させています。柏の葉エリアや豊洲、日本橋では、三井不動産がWhimと連携してサブスクリプション型のMaaSを提供。スウェーデンのイエテボリでは、マイカー以外の移動サービスが付帯したMaaS付き住宅が始まっています。
 

海外の事例

エネルギーや環境との連動も重要です。ウィーン市では行政とシュタットベルケ(地元の電力会社)が移動サービスシステムを運営する会社を立ち上げ、地産地消によるエネルギーマネジメントを担うプラットフォームにより、エコシステムの構築を進めています。

 

バーチャルなMaaSだけではなく、グリーンエネルギーを使用するモビリティのためのハブも駅や停留所に設けられ、移動困難者に対する移動の機会を創出し、さらにハブとなるエリアはパブリックスペース、環境教育としての場、人の移動の活性化につなげるといったアイデアも生まれています。

海外の事例

サービスを利用拡大する要素としてキャッシュレスも不可欠です。顔認証でハンズフリーにすることで、高齢者やベビーカーの利用や海外からの観光客も利用しやすくする実験が始まり、顔認証で終わらず、改札のないユニバーサルなデザインに結節点が変わっていく、インフラも合わせてアップデートされていくことが大切です。

 

 

道路や駐車場の考え方が変わると街づくりも変わる

モビリティ革命を象徴する大規模なプロジェクトとして、都市の結節点を再開発する動きが紹介されました。日本でも参考にされているサンフランシスコのセールスフォース・トランジット・センターをはじめ、アメリカの複数の都市では、高速道路沿道のモビリティハブ構想があり、自動運転車両や空を飛ぶクルマなどのイノベーション拠点として活用しようとしています。

道路上部空間の交通結節点

アジアでもMaaSと連携した大規模な都市計画の例があります。シンガポールの公共交通は無人で自動運転が基本であり、パンデミックでも安定した運行が実証されている都市です。スマートシティ計画では、地下を道路が走り地上を歩行者や公共空間にしています。自動運転や公共交通、無人ヘリの導入など、レジリエントなサービスが融合した一体型都市を目指すモデルとして世界から注目されています。

 

街路を変えることで街の機能を変える例も次々と始まっています。フランス北部のルーアンは、半自動運転バスの専用レーンを設け、車道を狭くした分だけ歩道を広げました。スイスのシオンでは、ITで時刻表無しでもどこを走っているわかる低速の自動運転バスを5年前から運用し、住民の自動運転に対する信頼意識を育てています。また、パリのビジネス街ラ・デファンス地区でも、人工地盤で歩行者と自動運転バスが共存する試験運行が実施されました。

 

自動車の利用が多いアメリカでは、駐車場の価値を変えようとしています。ボストンではカーシェアやモビリティの利用で駐車場の利用が減ることを見越し、ビルを建てる場合に必要だった駐車場の上限を決める法律を制定しました。Waymoが商用サービスを開始したアリゾナでは、市役所前に自動運転車両だけ5分間路上停車できる規制を世界で初めて実現しています。

 

コロナ禍では、路上駐車スペースが多かったサンフランシスコでは、これら空間を利用してベンチやテーブル、カフェにする取り組みが始まり、世界中で同様の動きが始まっています。

海外の事例

得意分野を活かした未来のMaaSをイメージする

発表のまとめとして牧村氏は「パンデミックは人の価値観を変え、リアルな都市空間の価値を再考する機会をもたらした」と言います。「モビリティサービスでグリーンリカバリーを進めようとする動きは日本でも始まっていますが、人の動きを変えるには政策的な導入も必要ですし、デジタルを融合したサービスをからめながら投資する海外の動きは、日本の今後の計画に向けて参考になると思います。移動の選択肢をどう増やして、価値をどう高めるかがポイントであり、そこは日本が得意とするところでもあります。重要なのは、MaaSとCASEのその先をイメージすることです。」

 

発表後のQ&Aは、牧村氏の話を受けていつもよりさらに多くビジネスに関する質問が寄せられました。MaaSのユニバーサル化について、公共とパーソナライズ空間の創出をどう演出する方法があるのか、アーバンMaaSとは別に注目され、またこうした動きの中でサービサーはどうすればいいのかアドバイスが欲しいといった質問があり、それぞれ具体的な例を挙げながら回答いただきました。

 

地方版MaaSともいわれる過疎地型Rural MaaSで注目すべき事例はあるのかという質問に対しては、すでに始まっているサービスを紹介。「3,40年前に都市開発された地域での移動サービスは大きな課題であり、どのようなモビリティサービスがビジネスとして考えられるか、注目しておいたほうがよいでしょう」とコメントしています。

 

また、車両に関する法律の動きや、ユーザーの変化などにも注目し、サービスの開発では、MONETコンソーシアムでも取り組んでいるAPI連携が鍵になるとしています。

 

最後に牧村氏は「MONETコンソーシアムの活動を通していろんな情報を得られる機会があると思います。企業人であれば2,3年先を見て動くところを、MaaSやスマートシティでは、5年から10年先がどうなるかを自分ごとに当てはめながら想像することで、ビジネスの課題がはっきりと見えてきます。その時に今回の話もご参考にしていただければと思います」とコメントし、発表を締め括りました。

 

 


今回のExpert Pitchはいかがでしたでしょうか? 国内外のMaaSとそれらに関連する都市計画事業は急速に進んでおり、ご自身の目で世界の変化を感じられる日が待ち遠しくなったと思います。MONETコンソーシアムではみなさまのビジネスを支援するべく、エキスパートの方々を通じて最新情報をお届けする企画を用意していますので、ぜひ次回もご参加ください。