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2021.03.17 MeetUp

【Expert Pitch #7】モビリティ×不動産

三井不動産株式会社 ビジネスイノベーション推進部グループ長
川路 武 氏

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MaaSの最前線で活躍するエキスパートをゲストに迎え、事業開発のヒントとなるインサイトをお伝えする「Expert Pitch」。第7回となる今回は、三井不動産株式会社にご登壇いただき、「モビリティ×不動産」をテーマにMaaSやビジネスイノベーションの取り組みについて、事例を交えながらご紹介いただきました。

「モビリティ×不動産」

三井不動産株式会社 ビジネスイノベーション推進部グループ長
川路 武 氏

 

大手不動産業界の中でも常にトップに位置する三井不動産は、住宅からオフィスビル、商業施設、ホテルまで不動産を中心に幅広い事業をグループ全体で手掛けています。その内容は多角化しており、商業施設では海外にアウトレットを進出、また、物流施設の開発を中心とするロジスティクス分野も好調です。

グループ全体の中期経営計画としては「VISION 2025」掲げ、顧客志向の経営、グループ経営の進化、ビジネスイノベーションの3つを基本ストラテジーとしています。中でもビジネスイノベーションでは、他の業界と比較して遅れているデジタル化に力を入れ、不動産業そのものを変えていこうとしています。

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例えば、社員による新規ビジネスの構築や既存事業のイノベーションを支援する「MAGIC(マジック)」と呼ばれる事業提案制度を実施しています。アイデアを応募するだけでなく、15%ルールや個別メンタリングなどでサポートし、計3回のプレゼンで事業化を審査します。採用されると人事が発令され、事業計画の策定から実現に向けた活動ができます。

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「MaaS」と「移動商業」2つのモビリティ構想に取り組む

モビリティ分野では、会員制カーシェアリングサービスの「カレコ・カーシェアリングクラブ」や、駐車場サービスの「三井のリパーク」などを展開しています。

MaaS事業では、世界初の本格的なMaaSプラットフォーマーであるフィンランドのマースグローバル社が開発する「whim」アプリに注目。2019年4月に資本提携を含む業務提携を発表しました。また、2020年12月15日には新たな体験を生み出す「モビリティ構想」を発表し、話題になりました。

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モビリティ構想は「VISION 2025」の中にも含まれています。不動産×移動をキーワードに、テクノロジーで“街・人・サービス”をつなぎ、街で暮らす人々に新たな体験価値を提供することを目指しています。

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具体的には、「人」が「モノ・サービス」の元へ移動する“MaaS”と、「モノ・サービス」が「人」の元へ移動する“移動商業”の2つを進めています。

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アセットとサービスをつなげて新しい体験を提供

三井不動産ではモビリティ戦略を「アセット」「移動価値」「街づくり」の3点から位置付けています。

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例えばアセットに関しては、コロナ禍をきっかけにオフィスや住宅、商業施設に求められる機能がボーダレス化しつつあることに対応し、スペースや使い方のバリエーションを増やそうとしています。不動産を軸にした移動式サービスなど、アセットとサービスをつなぐ新しい提案を検討しています。

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MaaSに関しては具体的な取り組みを始めており、マンション住民向けにWhimアプリを使って、バス、タクシー、カーシェア、シェアサイクルのサービスをサブスクリプションで提供。さらにコミュニティマネージャーを通じて、街のオススメ情報を移動手段とあわせてダイレクトに相談できるようにするなど、不動産ビジネスで培われた強みを付加した展開をしています。

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2020年9月に柏の葉で実証実験を開始。今年1月から有償に切り替え、価格帯で3つのプランを提供しています。「自家用車の所持率はそれなりにあるので、安い価格も設定したのですが、家族が使っている間にカーシェアやタクシーを利用したいというニーズが意外に多く、最高額の月額1万円でも足りないとう声もけっこうありました」(川路氏)

その後、12月15日から日本橋、12月21日から豊洲という、柏の葉とはライフスタイルが異なるエリアでも実証実験を開始。今後の実装に向けたロードマップやサービスの付加価値高めるアイデアなども紹介されました。

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ニーズにあわせて店舗が移動するキャラバンで街の魅力を底上げする

続いて「移動商業」の概要とコンテンツが紹介されました。顧客の近くへサービスがやって来るというコンセプトで、街全体の魅力を底上げすることを目指します。その中では、フードトラックなどの移動商業店舗と多種多様なスペースをマッチングする、街のプラットフォーム事業にすることも視野に入れられています。

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「一つは、平日と休日だけでなく朝昼晩で利用したいサービスは地域によって異なり、それぞれのニーズにあわせて店舗が移動、巡回するキャラバンを作ることがあります。固定店舗とECのあいだをつなぐ新たなタッチポイントとして、テナントと顧客の両方にメリットがあります。」(川路氏)

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昨年は豊洲、晴海など複数のエリアでトライアルを実施しました。結果はテナントと顧客の双方から高評価が得られ、ビジネスとしての手応えが感じられました。今後はさらに従来になかったコンテンツを提供し、アセットにあわせた事業エリアの拡大も含めた多様化を進める予定です。

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川路氏からはもう一つ、「ホテルやワークスペースなど、動かないと思われていたものを動かすことにもチャレンジしたい」と言い、「実現にはいろいろな業種や分野の方とのコラボレーションが不可欠なので、興味がある方は気軽に声をかけてください」と参加者に呼びかけました。

発表の後のQ&Aは今回も数多くの質問が寄せられ、事業化の課題や収益化に関する数字などここだけでしか話せない裏話も含め、時間ぎりぎりまで回答していただきました。

今回のExpert Pitch、いかがでしたでしょうか? MaaS事業の実現だけでなく、動かない不動産を動かすことにも挑戦しようというモビリティへの意欲的な取り組みに驚かれた方も多いと思います。MONETコンソーシアムでは来年度MeetUP開催に向けて、さらにパワーアップした企画を計画していますので、次回もどうかご期待ください。