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2020.09.16 MeetUp

【Expert Pitch #3】医療×モビリティの最前線地域から見えた 医療課題の解決による住民のQOL向上の糸口

Keynote Speech 1
「診療所がおうちにやってくる」
長野県伊那市の医療×MaaSの取り組みについて
長野県伊那市役所 安江 輝 氏

Keynote Speech 2
MONETが考える医療を中心としたモビリティサービスの展望
MONET Technologies 株式会社

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それぞれの専門分野でMaaS最前線に関わるエキスパートをゲストに迎え、事業開発のヒントとなるインサイトをお伝えする「Expert Pitch」。第3回はいよいよ始動開始する「医療×モビリティ」をワーキンググループの開始にあわせて2つのキーノートスピーチを行いました。

最初のキーノートスピーチは、MONETと一緒に日本初となる医療MaaSの実証実験を行う長野県伊那市での取り組みについて、医療MaaSの分野の第一人者でもある伊那市役所の安江 輝 氏よりお話いただきました。後半は伊那市での取り組みにも参画したMONETの担当者から、MONET全体での医療MaaSへの取り組みについて、ワーキンググループの紹介と併せてお話しました。

Keynote Speech 1
「診療所がおうちにやってくる」
長野県伊那市の医療×MaaSの取り組みについて
長野県伊那市役所 安江 輝 氏

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オンライン診療を活用した移動する診療所

長野県の南部に位置する伊那市は、2つのアルプスをはじめとする豊かな自然に育まれた自然共生都市で面積も県で3番目に大きく、山の近くまで多くの人が住んでいます。そのため通院が困難であったり、全国の地方自治体と同様に病院や医師不足の問題も抱えています。そうした問題に対応するため全国でもいち早く医療MaaSへの取り組みをスタートさせました。

2019年5月にMONETと連携協定を締結して、伊那市とMONET、コンソーシアム企業である株式会社フィリップス・ジャパンと車両開発を進め、モバイルクリニックと呼ばれる「移動診察車 INAヘルスモビリティ」の運用を12月より日本で初めて開始しています。

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医療MaaSの方法はいろいろありますが、伊那市ではモビリティに医師は乗車せず、オンライン診療を利用して指示を受けた看護師が対応するモデルを構築しています。

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伊那市役所の安江輝氏

発案者である伊那市役所の安江輝氏は「伊那市の場合は患者さんの往診に移動する時間がどうしても長くなるため、モビリティには看護師に乗ってもらい、現場ではオンライン診療を利用して医師の指示を受けながら対応することで効率が良くなると考えました」と説明します。

コロナの感染拡大で急速に進む医療のオンライン化を先取りするようなサービスの流れを考えており、医薬連携による遠隔服薬指導や医薬品の配送も視野に入れた医療MaaSを推進しています。「私は市役所の人間なので医療や医療機関、薬局、福祉や介護とも連携する、地域包括ケアも想定しています。」(安江氏)

医療MaaSの推進を加速する連携と体制作り

医療MaaSの実現に向けては様々な企業や医療機関が連携協定を結んで協力し合い、それぞれが得意とする分野で先進的な技術を導入しています。

車両はトヨタハイエースをベースに半年かけて作られ、車内にはオンライン診療に対応できるようPCやモニタ、スピーカーなどが装備されております。また、血圧計や血糖値測定器、SpO2測定器、12誘導心電図など通常のオンライン診療では患者が持っていることが少ない機器を搭載し、看護師が測定することで医師の診察の質を高められます。

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実証実験はトヨタ自動車のファンドであるトヨタモビリティ基金に採択され、2年計画で実施されています。初年度は車両開発を行い、昨年12月から実証実験を開始、最初は関係者が模擬患者を務めるテスト運行からはじめ、今年6月から実患者での診療報酬ベースでの運用を開始しています。9月の時点で14人の患者に29回診療が実施されています。

さらにモバイルクリニックを中心に推進体制が強化され、運用でJRバス関東株式会社が新たに参加しています。他にもMONETによる車両運行システムの刷新、デジタル聴診器の導入などの取り組みを推進中で、実証実験で収集される様々なデータを次の取り組みに活かすことも検討しています。

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「例えば運用に適切な車両数を検討する場合、単純に人口は減るけれど高齢者は増えるので、データやリサーチを元に自治体は限られた財源から効率的な運用方法を考える必要があります。医療分野は新しい技術に対して安全面など国の規制が厳しいので、状況を見据えながら最新技術や医療機器を導入する取り組みを推進していきます」(安江氏)

医療MaaSの運用を現在進行形で担当している安江氏に対し、参加者から驚くほどたくさんの質問が寄せられました。医療の規制に関する話から運用費用まで幅広い質問に的確に回答し、交付金の申請についてアドバイスもするなど、時間いっぱいまで話が盛り上がりました。

Keynote Speech 2
MONETが考える医療を中心としたモビリティサービスの展望
MONET Technologies 株式会社

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後半はMONETが進める医療MaaSとそれらを取り巻く日本の医療の現状について、企画開発を担当するMONET Technologiesの加藤卓己、松井拓己が紹介しました。

医療MaaSは地域と医療の課題を解決するための手段

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日本を取り巻く様々な問題の一つに少子高齢化があり、全世帯の21%が70歳以上のみの世帯で占められ、免許返納者数が増えるなど、特に地方では外出しないできない高齢者が増えています。当然ながら通院ハードルも高くなり、適切なタイミングで医療サービスが受けられないため、症状を悪化させるという深刻な問題が生じています。

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そうした背景からMONETでは医療MaaSを地域課題、医療課題を解決するための手段であると位置付けています。外来や在宅医療に加わる新たな選択肢でもあり、医療アクセシビリティを高める環境は重要と考えています。

MONETが進める医療MaaSの対象であり、連携を進めているのは全国の自治体で、全国454の自治体にアプローチを行っています。今年7月末の時点で全国61の基礎自治体及び、北海道、愛知県、大阪府、佐賀県と連携し、各自治体に応じたMaaSの検討を行っています。

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医療課題を抱える47自治体のうち医療×モビリティとしての取り組みで実施されている事例としては、前半で紹介した長野県伊那市をはじめ、愛知県浜松市、千葉市があり、伊那市は医療MaaSのフラッグシップモデルとしても位置付けられています。

地域住民のQOL向上に貢献する機会につながる

MONETでは医療MaaSを医療の課題を取り巻く4つのポイントに結びつけ、解決することを目指しています。

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「健康な状態を長く保ち、病気で治療した後も継続して診療やケアを受けられるようなサービスをMaaSで実現していくことは、地域医療の向上や医療費の削減にもつながり、全体としては地域住民のQOL向上に貢献できると考えています。」(加藤)

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この先予定している取り組みとしては、医療を必要とする人たちに安心して届ける医療サービスの移動や、コンソーシアム企業とのコラボによる移動医療サービス全体の高度化があります。

また、医療の課題は氷山の一角であり、表面化することでその他の生活にまつわるいろいろな課題が出てきます。そうした問題を解決するための取り組みとして、医療xモビリティをテーマにした分科会を立ち上げ、活動を進めていくことを発表しました。

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分科会では、誰でも生きたい場所で生きられる社会を目指し、その為の持続可能なビジネスモデルとなるサービス作りを行います。運営に関しては参加企業の皆さまとこれから骨子をデザインしていきたいと考えており、具体的なアイデアを検討するデザインワークショップをオンラインで開催することを発表しました。

「医療業界に限らず医療の課題を抱えている地域に貢献したいという思いがある企業や関心がある方を広く募集しています。」(加藤)

「医療の課題は深く、生活に幅広く関わる領域でもあるので、自分たちもそうでしたが医療分野の初心者でも、師匠と仰ぐ安江さんのようなエキスパートの力を借りながらいろいろ面白い取り組みができると実感しています。モビリティや自治体など様々な分野の方たちと関われる機会として、分科会にも参加していただけるとうれしいです。」(松井)

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MONET Technologies  松井拓己(左) 、加藤卓己(右)、

本イベントでの発表を機に募集を開始したデザインワークショップは、多数の企業からの参加申込を受け、10月21日に第1回が、11月24日には第2回が開催されました。
合計25社36名の方々に参加いただき、率直な意見交換を行うと共に、今後の分科会活動の具体的な方向付けに向け、大変有意義なインプットを得ることが出来ました。

今後の活動内容やスケジュールについては随時お知らせしていきますので、興味のある方はコンソーシアム事務局までお問い合わせください。